(ネタバレになるかも知れませんので、観ていない方は、この記事を読むのをお控えください。)
娯楽映画ではなくて、観ていて辛い映画だったし、難しかった(眠っている人もチラホラいたし)。
精神障害を患っている主人公のアーサが社会生活から堕ちていく様子を耐え忍びながら見ていた。
正直、字幕を追うのが精一杯で、内容を理解できたとは決して言い難い。
けれど、凄く色々と感じさせられるところがあった。この映画は、高く評価されることになると思う。
観終って感じたこととしては、
構図として、先のアメリカ大統領選挙を思い浮かべてしまった。
実績と経験豊かなヒラリーと、滅茶苦茶な感じのするトランプ。
勝ったのは、既成システム維持よりも、破壊を予感させるトランプだった。
ヒラリーの実績と経験は、貧困層には、役に立たないといったところか。
エスタブリッシュメント(支配階級)なんて用語も飛び交っていた。
格差社会の歪を感じさせるものであった。
虐待の場面もあった。
アーサーが受けた過去の虐待を知って、復讐して、足かせというか束縛から解放された場面は、辛く悲しかった。
アーサーは、一時的には気分が良かったようだが、その後に待ち受けている制裁を思うと辛かった。
医療福祉制度も機能していないというのは、おそらく現実と同じではないだろうか。
役所の「相談員」は、毎回毎回、同じ質問を投げかけ、相談する方も、同じ内容の相談をする。そして毎回同じ回答を受ける。その繰り返し。相談する方は何とか良くなりたいのに何も変わらない。
堕ちつつある者を救う方法はあるのか?
堕ちつつある者は、血の足跡を付けながら生きていくしかないということなのか?
かくして、「ジョーカー」が生まれたのか?
人気のあるカードゲームの内容では、「ジョーカー」はいろいろな役になり得る。
この映画では、犯罪者を生んでしまったが、日本国の現実社会では、「ひきこもり」やどんなに働いても抜出すことが困難な「困窮者」を生んでしまっているように思えてならない。
悪とは、何なのか、考えてしまう映画であった。
これは「笑いごと」ではないというメッセージもあったように感じた。